音は感情を動かす!「サウンドロゴ」作成のヒント その1
コラム 2021.09.28
記事【音もロゴになる!?「サウンドロゴ」ってどんなロゴ?】でご紹介しましたが、近年は“音のロゴ”と言われる「サウンドロゴ」を活用して、“聴覚的なブランディング”を行う企業やブランドが増えました。
「サウンドロゴ」は、“視覚的なブランディング”のツールである「ロゴマーク(図案)」と同じように、ターゲットやユーザーに強いイメージや印象を与えます。
その為、“どのような音がどのような印象を与えるか”という事をきちんと考えて作成しなければ、思ったようなブランディングを図る事が出来ません。
そこで今回は、どのような「サウンドロゴ」を作れば良いか悩んでいる方の為に、2回に渡って“音と感情の関係”について解説します。
ぜひ、「サウンドロゴ」作成の参考にしてみてください。
「音」でのブランディングも重要!「サウンドロゴ」で失敗する事もある!?
ところで、ブランディングツールは「ロゴマーク」が最重要で、「サウンドロゴ」は「(会社やお店、ブランドの)雰囲気に何となく合っていれば良い」と思っている方はどれくらいいるでしょうか。
記事【音によるブランディング「サウンドロゴ」の実例紹介!】の最後でも触れていますが、視界に入らなければ認識されない「ロゴマーク」と違い、「サウンドロゴ」は自然と人々の耳に入っていきます。
その為、ターゲットやユーザーにイメージや印象を与える機会は、「ロゴマーク」よりも「サウンドロゴ」の方が多くなります。
つまり、どんなにしっかりと考えられた良いデザインの「ロゴマーク」を作っても、“何となく”の雰囲気で「サウンドロゴ」作ってしまった場合、ターゲットやユーザーは“何となく”の雰囲気の方に影響を受けてしまう可能性が高いのです。
音というものには“賑やかし”のイメージを持つ方が多いかもしれませんが、「ロゴマーク」をデザインするのと同じように、「サウンドロゴ」も印象やイメージをよく考えて作成する必要があります。
実はある大手企業の有名商品で、「サウンドロゴ」による失敗談が語り継がれているそうなのでご紹介しておきましょう。
日本で初めてプレーンヨーグルトを発売した「株式会社明治」。
その「明治」から発売されている「明治ブルガリアヨーグルト」の「サウンドロゴ」は、多くの方がテレビCMなどで耳にした事があるかと思います。
→ 明治ブルガリアヨーグルト「サウンドロゴ」引用元:明治ブルガリアヨーグルト倶楽部
画像引用元:明治ブルガリアヨーグルト倶楽部 | 株式会社 明治
実はこの「サウンドロゴ」、過去に“少しだけ”変更した事があるそうなのですが、その際にヨーグルトの売り上げがガタ落ちしたとの事…。
参照記事:明治ブルガリアヨーグルト、「サウンドロゴ」微変更で売上ガタ落ちした過去の教訓 | ダイヤモンド・オンライン
何かのきっかけ(新商品発売や創業◯周年などのタイミング)に合わせて「サウンドロゴ」を変え、“新しさ”を演出しようとするのはどの企業でもよくある事だと思います。
しかし「明治」の場合、その“少しだけ”の変更が、思いのほかユーザーに受け入れられなかったのです。
大手企業ともなるとテレビCMを流す頻度が高いので、ユーザーが「サウンドロゴ」を耳にする機会も多くなります。
作り手(企業やブランドなど)にとっては“少しの違い”であっても、受け手(ユーザーやターゲット)にとっては繰り返し耳にする事で“大きな違和感”に変わってしまうので、“どんな「サウンドロゴ」でも慎重に作成する必要がある”という例ですね。
音と感情の関係
「ロゴマーク」の“形や色”が、それを見た人に様々な印象やイメージを与える※のと同じように、「サウンドロゴ」の“音”も、それを聴いた人に様々な印象やイメージを与えます。
※記事【形と色でこんなに変わる!ロゴが与えるイメージの話】にて、形や色が人々に与えるイメージについて詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
特に“音”は、印象やイメージを与えるだけでなく、人の感情を揺さぶる効果も持っています。
ところで、「人はどのような状態の時に、どのような感情になるのか」という事を、分かりやすく分類した図があるのはご存知でしょうか?
横軸で感情の「快/不快」を、縦軸で脳波の「覚醒/眠気(非覚醒、沈静)」を表現し、二軸上に喜怒哀楽の感情を分類したモデルで、心理学の分野で長年用いられている「ラッセルの感情円環モデル」というものです。
縦軸の「覚醒/眠気」は、イメージしやすく言い換えると“興奮度”の高低を示している軸になります。
一般的に、「テンポの速い曲」は気持ちが高揚し、「テンポの遅い曲」はリラックス効果があると言われています。「感情円環モデル」で言うと、テンポの速さは縦軸の「覚醒/眠気」に関係しています。
また、「高い音」は明るい・楽しい気分に、「低い音」は悲しい・暗い気分を誘発しやすくなると言われています。「感情円環モデル」に当てはめて考えてみると、音の高低は横軸の「快/不快」にあたります。
このような“音と感情の関係”に基づいて映画やドラマのBGMは作られているので、映画やドラマを視聴していて「BGMによって一層感情が引っ張られた」という経験をした方は多いかと思います。
ただし、音には個人の好みがあるので、必ずしも先述の内容が全ての人に当てはまる訳ではありません。
ですが、どのような音がどのような感情に結びつくのかを知っておく事は、「サウンドロゴ」を作成する際の参考になります。
怖いと感じる音とは?
“音”が人の感情を揺さぶるという事は、“音”によって人の感情をマイナスへ引っ張ってしまう可能性があるとも言えます。
企業やブランドなどの場合、ターゲットやユーザーに出来るだけ良いイメージや印象を与えたいので、マイナス感情(感情円環モデルの左側、怒・哀の範囲)を誘発するような音は避けて「サウンドロゴ」が作られます。
ただし、あえてマイナス感情を誘発するような「サウンドロゴ」を作る場合もあります。
それは、ホラー映画やホラーゲームなど“恐怖”を演出したい場合です。
怖いと感じる音楽の代表例として、ドラマ「世に奇妙な物語」のオープニングテーマがあります。
画像引用元:世にも奇妙な物語 – フジテレビの人気ドラマ・アニメ・映画が見放題<FOD>
ドラマのタイトルを出すだけで、“あの音楽”が自然と思い出されるのではないでしょうか?何とも言えない不安感を煽るこの曲は、一度聴くと忘れられませんよね。
オープニングテーマで使われているのは「ガラモン・ソング※」と言って、“怖い音楽”を数多く作曲している配島邦明(はいしま くにあき)氏の作品です。
※「ガラモン」とは特撮テレビ番組「ウルトラシリーズ」に登場する怪獣の事です。キーボードを弾く際の手の形が「ガラモン」の手の形に似ていた事から、この曲名が付けられたそうです。
画像引用元:ウルトラQ – 作品 – 円谷ステーション
この曲は、先述の「ラッセルの感情円環モデル」で言うと、「テンポが早い=覚醒」で「低い音=不快」になり、ちょうど「恐怖」を感じる要素を持っています。
さて、マイナス感情を誘発する音は、「テンポが速い」や「低い音」だけではありません。
実はこれ以外にも、人がトラウマになったり不快に感じる音はあります。
次回は、人が不快に感じる音について、さらに詳しく解説します。