「ビデオロゴ」がトラウマになる理由とは?
コラム 2022.03.15
前回の記事では、「ビデオロゴ」の特徴や、「モーションロゴ」との違いなどについて解説しました。
今回は、「ビデオロゴ」が人々のトラウマになってしまうケースがあることについて解説します。
「ビデオロゴ」がトラウマになる理由
映像の中に“怖い”と感じる要素が含まれている
「ビデオロゴ」では、前回の記事でも解説したとおり、“短いイメージ映像”と“動くロゴ”が使われています。
この一連の映像の中に、“怖い”と感じる要素が入っていたことによって、「ビデオロゴ」がトラウマになってしまう人が発生してしまうのです。
『ビデオロゴは恐怖映像でもないのに、“怖い”と感じることなんてあるの?』と思われるかもしれませんが、“怖い”と感じる要素は人それぞれです。
一見、どこにも“怖い”と感じる要素が無いような映像でも、トラウマになる人がゼロとは限りません。
せっかく作った「ビデオロゴ」で人々がトラウマになってしまうのは、とても残念なことですよね。
「ビデオロゴ」でトラウマになる人を減らす為には、どのような要素が人に“怖い”と感じさせるのかを知ってく必要があります。
人が“怖い”と感じる要素の一例をご紹介しますので、ぜひ「ビデオロゴ」を作る際の参考にしてみてください。
トラウマになる要素
動き
「ビデオロゴ」は映像なので、何かしらの“動き”があるのは言うまでもありませんね。
そして、その“動き”に対して、人が怖さを感じてしまう場合があるのです。
不自然な動き
例えば、人物や動物、架空のキャラクターが登場していた場合、そのキャラクターの“動き方”によって恐怖を感じる場合があります。
怖いと感じる一番わかりやすい例が、“ゾンビの動き”です。
生きていれば体は滑らかで自然な動きをしますが、「ゾンビ」は死後硬直で動きにくくなっている為、全体的に不自然な動きをしますよね。
人は不自然な体の動きに違和感を抱く為、“怖い”や“気持ち悪い”と感じてしまうのです。
滑らかな動き
不自然な動きとは反対に、滑らかな動き(いわゆる“ぬるぬる動く”と言われる動き)でも、人は怖さを感じてしまう場合があります。
例えば、アニメーションでキャラクターが滑らかなに動いている場合、作画に注目すると“丁寧に作られたアニメーション”として見れますが、動きに注目すると『アニメーションなのに現実の動きのようだ』と感じ、不気味に見えてしまうことがあるのです。
特に、キャラクターがリアルな描写になればなるほど、滑らかな動きに不気味さを感じやすくなる傾向があります。
「不気味の谷(現象)」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
ロボット工学の分野で、森政弘氏(東京工業大学名誉教授)によって提唱された心理現象で、“ロボットの見た目や動きを人間に近づけると親近感が湧くが、人間に近づいたある地点に達すると、逆に嫌悪感を抱くこと”です。
嫌悪感を抱く原因としては、ロボットが人に近づくほど、ほんの小さな“人間との違い”に違和感を覚えたり不自然さを感じたりするからだそうです。
(ちなみに、「不気味の谷」を超えると、再び親近感が湧くようになります)
そしてこの「不気味の谷」は、ロボットだけの話ではありません。
CGなどで作られたキャラクターでも、同じことが言えます。
近年では、3DCGによって非常にリアルで、尚且つ滑らかな動きのアニメーションを作成することが可能になっている為、思いがけず「不気味の谷」となる映像になってしまう可能性があるのです。
「ビデオロゴ」にリアルな描写のキャラクターを登場させる場合には、「不気味の谷」にならないよう注意が必要です。
カメラワーク
「カメラワーク」とは写真や動画を撮影する際の技法の総称で、被写体を撮影する際のカメラの角度や動かし方のことです。
カメラの角度や動かし方だけで、“怖い”と感じることなんて無いように思いますよね?
ですが、「カメラワーク」は“恐怖を与える演出”のひとつとして、ホラー映画などでも使われています。
ダッチアングル
通常は水平・垂直で安定感の出る撮影を行いますが、あえて水平・垂直のラインを傾けて撮影することを「ダッチアングル」と言います。
水平・垂直のラインが傾くと画面が不安定に感じる為、不安や緊張感、恐怖を演出する映像になります。そして、傾く角度が大きくなるほど、恐怖を与える度合いは大きくなります。
ただし、少しの傾きであれば躍動感のある映像になるので、必ずしも「ダッチアングル」が怖い演出になる訳ではありません。
ハンディショット
ホラー映画やアクション映画などでよく見かける手法で、手持ちカメラで撮影することであえて“手振れ”の映像を撮影する(または、そう撮影したように見せる演出を加える)のが「ハンディショット」です。
通常はカメラを固定して撮影を行う為、手振れが無く、安定感のある映像になります。その為、視聴者が“カメラを通して見ているもの”と認識して、客観的に映像を観ることができます。
一方「ハンディショット」は、視聴者が“自分の目”でその場面を見ているような感覚になるので、臨場感や緊張感のある映像になります。
例えば、“何かに追われている”といった内容で「ハンディショット」を使った場合、カメラを固定して撮影した映像よりも恐怖心を強く刺激します。
「ハンディショット」も「ダッチアングル」同様、必ずしも怖い演出になる訳ではありません。
ですが、手振れの演出が激しいと視聴者が映像に酔ってしまい、それによってトラウマになってしまうこともあるので、こちらも注意が必要です。
モチーフ
「ビデオロゴ」で使うモチーフやキャラクターにも、実は注意が必要です。
例えば、人が苦手と感じるものに「虫」や「爬虫類」を挙げる人は少なくない為、これらのモチーフを「ビデオロゴ」に使うと、“怖い”や“気持ち悪い”と感じてトラウマになってしまう場合があります。
また、意外に思われるかもしれませんが、「ピエロ」が苦手な人も少なくありません。
「道化恐怖症(英:Coulrophobia/コルロフォビア)」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
「道化恐怖症」は「ピエロ恐怖症」や「クラウン恐怖症」と言われることもありますが、その名のとおり“ピエロに対して異常な恐怖心を抱く病的な心理”のことです。
有名俳優のジョニー・デップも「道化恐怖症」なのだそう。
「ピエロ」を苦手に感じる理由は、“メイクされた顔から表情が読み取りにくい”や“映画などの創作物で悪役のイメージが定着した”など、様々あるようです。
特に、幼い頃に「ピエロ」に対してそのようなネガティヴなイメージを持ってしまったことによって、「道化恐怖症」になってしまった人が多いようです。
ちなみに、「ピエロ」と「クラウン」は同じ意味ではありません。
日本ではひとくくりに「ピエロ」で定着していますが、本来は大道芸やサーカスなどに登場するコメディアンを「クラウン」、「クラウン」の中でも“馬鹿にされながら人々を笑わせる役”を「ピエロ」と言います。
白く塗られた顔や赤い鼻など見た目が同じの両者ですが、実は「ピエロ」には“涙のメイクが施されている”といった違いがあります。
音
「ビデオロゴ」に使われているのは、映像だけではありません。
BGM(バックグラウンド・ミュージック、または背景音楽)や効果音など、様々な「音」も使われています。
記事【音は感情を動かす!「サウンドロゴ」作成のヒント その1】と【音は感情を動かす!「サウンドロゴ」作成のヒント その2】で詳しくご紹介していますが、「音」には人の感情を揺さぶる効果があります。
つまり、「音」が理由でトラウマになってしまうことがあるのです。
例えば、先述の記事内でもご紹介している「不協和音」は、一般的には“耳障りな和音”のイメージがあるかと思いますが、使い方によっては曲を表情豊かにする要素を持っているので、必ずしもトラウマになる「音」ではありません。
ですが、「不協和音」は元々“不安定な和音”なので、使い過ぎると不快感が増してしまい、視聴者のトラウマとなってしまう可能性が高くなります。
以上のように、人が“怖い”と感じる要素は様々あります。
そして、ここで挙げた要素以外にも“怖い”と感じる人はいるでしょう。
その為、一概に『このような内容の「ビデオロゴ」を作れば、誰もトラウマになりません!』と、例を挙げて断言もできないのです。
尚、「You Tube」などの動画共有サービスでは、“トラウマになったビデオロゴ”をまとめた動画がいくつかアップロードされているので、人々が「ビデオロゴ」のどのような要素でトラウマになったのかを知ることができます。
「ビデオロゴ」を作る際には、そういったものも参考にしてみると良いでしょう。