「東京2020エンブレム」に学ぶロゴデザインのポイント

コラム 2019.12.05

2019年も終わりに近づいてきました。来年はいよいよ、東京オリンピック・パラリンピックが開催されますね。

その東京オリンピック・パラリンピックのエンブレム、発表の様子はテレビなどで報道されたので、目にした方も多かったのではないでしょうか。

今回はそのエンブレムのロゴを例に、ロゴの役割や意味についてご紹介していきたいと思います。

 

 

 

 

ロゴの役割とメッセージを込める意味

まずは、エンブレムの作者とデザインに込められたメッセージをご紹介いたします。

引用元:TOKYO 2020 | 東京2020エンブレム

●制作者
氏名:野老 朝雄(ところ あさお)

●組市松紋(くみいちまつもん)
史的に世界中で愛され、日本では江戸時代に「市松模様(いちまつもよう)」として広まったチェッカーデザインを、日本の伝統色である藍色で、粋な日本らしさを描いた。
形の異なる3種類の四角形を組み合わせ、国や文化・思想などの違いを示す。違いはあってもそれらを超えてつながり合うデザインに、「多様性と調和」のメッセージを込め、オリンピック・パラリンピックが多様性を認め合い、つながる世界を目指す場であることを表した。

 

野老氏によると、シンボルマークの「3種類の四角形」はオリンピックとパラリンピック同じ数を使って構成されているとのこと。2つのシンボルマークの「3種類の四角形」が同じ数という部分に、「パラリンピックは、もう一つのオリンピックである」というメッセージ性を持たせることができます。

 

もし「3種類の四角形」を違う数で2種類のシンボルマークを作ったのでは、このメッセージ性を持たせることはできません。緻密に計算された上にメッセージを込めたシンボルマークだったのです。

 

 

ロゴは見た目だけじゃダメ?

ロゴにはこのエンブレムのように、意味やメッセージ、理念が込められている場合がほとんどです。

でも、一見しただけでは「なぜそうデザインされているのか」までは分からないものが多いですよね。では、「どうせ分からないのだから…」と、ただ見た目がカッコいいデザインにすれば良いのでしょうか?

カッコいいことも大切かもしれませんが、それだけではただの「飾り」になってしまいます。

ロゴに意味やメッセージ、理念を込めると、そのロゴを使う側(企業であれば、そのスタッフ)の意識に働きかけ、ロゴを通じて共通の理念を持つことができます。

東京オリンピック・パラリンピックには「東京2020大会ビジョン」というのが掲げられています。

 

スポーツには、世界と未来を変える力がある。
1964年の東京大会は日本を大きく変えた。2020年の東京大会は、
「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」、
「一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」、
「そして、未来につなげよう(未来への継承)」、を3つの基本コンセプトとし、
史上最もイノベーティブで 世界にポジティブな改革をもたらす大会とする。

引用元:TOKYO 2020 | 大会ビジョン

 

「東京2020エンブレム」はこの「東京2020大会ビジョン」が視覚的に表現されたもので、東京オリンピックに参加する全員へ共通認識を持たせる役割を持っているのです。

では次に、デザインの観点から「東京2020エンブレム」のシンボルマークについて見ていきたいと思います。

 

 

 

「東京2020エンブレム」のデザインには参考になるポイントがいっぱい!

ロゴを使うのは原寸だけじゃない。「チェック柄」のロゴってどうなの?

ロゴデザインをする上で「チェック柄」を使うデザイナーは少ないかもしれません。

ロゴは看板・ポスターから名刺やピンバッヂなど大小様々なサイズで使われるので、デザイナーは「縮小した時でも認識できるデザイン」を考えます。チェック柄は縮小した時に潰れてしまう可能性があり、ロゴに向いているデザインと言えません。

ですがこの「組市松紋」の場合、縮小されても意外と認識できるシンボルマークだったのです。

ここで使われている「チェック柄」は、「丸(オリンピック)」と「上が開いた丸(パラリンピック)」それぞれの形(シルエット)を構成しています。

エンブレムが縮小して使われた場合、「チェック柄」はある程度潰れてしまいますが、「丸」と「上部が開いた丸」の形は認識できるので、「東京2020エンブレム」ということがわかります。

エンブレムの「チェック柄」は目を引くデザインですが、シンボルマークの丸形を表現する手段として使われているものなので、デザインの主役という訳ではありません。そのため、エンブレムが縮小されても「シンボルマークの形は変わらない」というのが、認識できる理由です。

「チェック柄」をロゴに使うのは、縮小した時に潰れても良い(シンボルマークの形を重視)デザインの場合に限った方が良さそうですね。

 

ところでこの「チェック柄」、3種類の四角形が複雑に配置されていますが、柄以外に日本らしさを感じませんか?

パラリンピックのエンブレムですが、シンボルマークの下の方、3種類の四角形の並びが扇の形にも見えますね。

「組市松紋」のコンセプトには記述されていないので偶然なのかもしれませんが、野老氏が「日本らしさ」を表現するために扇に見えるようにデザインした「遊び」なのではないかと推測しています。

 

 

ロゴは形(シルエット)だけじゃない。色の使い方にも意味がある

シンボルマークが「藍色1色だけ」という部分に、多くの方は「地味」という印象を持ったのではないでしょうか?

エンブレム最終候補の他の3案は「スポーツの祭典」のイメージにふさわしく色とりどりのデザインだったので、深い青色1色でデザインされた「組市松紋」にはひときわ地味な印象を持たれたと思います。

ですがこのシンボルマーク、「使っているのは1色だけ」ということに意味があると考えられます。

野老氏は「多様性」を表現するために3種類の四角形でシンボルマークをデザインしています。「形が違う四角形だけど、色は同じ」というところに、「違いはあっても、みんな同じ」という意味を持たせていのではないでしょうか。

もしこれがカラフルな3種類の四角形だったなら、ただの「相違」になってしまいます。そうなると、シンボルマークに込めたメッセージがぼやけてしまいますよね。

色の組み合わせ以外に、色の使い方もロゴをデザインする上で大切なポイントです。

 

 

「地味」なシンボルマークでも「目立つ」のはなぜか?

「1色のみでデザインされたことに意味があっても、やっぱりオリンピックのエンブレムにしてはちょっと地味では…」と思われる方も多いのではないでしょうか?

でも実は、この地味さが逆に「組市松紋」のエンブレムを目立たせているのです。

先述したエンブレム最終候補3案と「組市松紋」を比べると、「組市松紋」だけが色味が少ないので、ある意味一番目立っています。「色をたくさん使えば目立つ」という訳ではないんですね。これはロゴをデザインする上でもポイントとなる部分です。

オリンピック会期中は参加国の色とりどりの国旗が会場に掲げられますが、その中でも藍色1色の「組市松紋」は、その存在感を示すのではないでしょうか。

オリンピックと言えば世界中から注目されるビッグイベント。だからといって、色を多用せず1色のみでデザインされているシンボルマークは、実に「粋」ですね。

 

 

 

ロゴを上手に活用するために

エンブレムから発展したデザインが統一感をもたらす

ここからはロゴデザインからの「応用」についてご紹介します。

エンブレムの後に発表された「東京2020」マスコットの「ミライトワ(オリンピックマスコット)」&「ソメイティ(パラリンピックマスコット)」や、フィールドキャスト(大会スタッフ)、シティキャスト(都市ボランティア)のユニフォームデザイン。こちらもテレビなどで報道されていたので、目にした方も多かったと思います。

引用元:TOKYO 2020 | 東京2020マスコット

引用元:TOKYO 2020 | フィールドキャストユニフォーム デザインについて

 

マスコットやユニフォームを見て、「東京2020エンブレムっぽいデザインだな」と感じた方は多かったのではないでしょうか。

これは、エンブレムの「チェック柄」や「藍色」の要素を取り入れているために、エンブレムのデザインと全く同じでなくてもイメージをリンクさせることができるからです。

「マスコットやユニフォームは、全く違うデザインにしても良かったのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、エンブレムと同じデザイン要素を取り入れることは重要です。

エンブレムは先に発表されていることもあり、そのデザインは今や「東京2020」のイメージが定着していると思います。ですので、「チェック柄だけ」や「藍色だけ」だったとしても、エンブレムの要素をデザインに取り入れることで「東京2020」に関連するものと認識されやすくなるのです。

また、エンブレムやロゴといった「顔」となるものとそれ以外のもののイメージを統一することで、ユーザーに信頼感を持たせることができます。

ロゴのあとに名刺やWEBサイトを作るといった際に、それぞれをバラバラのイメージでデザインしてしまうと、ロゴに込めたメッセージや理念もぼやけてしまいますよね。どんなに素敵なロゴが出来上がっても、それ以外をデザインする際にも注意が必要なのです。

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