ロゴを保護する「商標権」!「著作権」との違いも解説します
コラム 2022.01.11
『◯◯のデザインが▲▲のデザインと似ている!パクリだ!』といった“デザインの類似トラブル”は、様々なところで発生しています。
“デザインの類似トラブル”は当事者同士だけで解決するのが難しく、裁判沙汰に発展してしまう事も少なくありません。
そして、こういった“デザインの類似トラブル”は、ロゴのデザインでも発生しています。
“デザインの類似トラブル”を未然に防ぐ為には、“ロゴに発生する権利”を正しく知る事が重要です。
今回は、ロゴを作った後に関わる「商標権」について詳しく解説します。
「商標権」って何?「著作権」との違いは?
“デザインの類似トラブル”が起こった際に、「著作権」や「商標権」といった言葉をよく耳にしますよね。
どちらも“創作されたもの”に発生する権利ですが、“ほとんど同じ意味の権利”といったイメージを持っている方は多いのではないでしょうか?
実は、この2つは全く違う権利になります。
「著作権」と「商標権」は「知的財産権」のうちの一つ
「知的財産権」というのをご存知でしょうか?
創作活動によって生み出されたものは、“創作した人の財産=知的財産”と呼ばれます。そして“知的財産”は「知的財産権」によって保護する事ができるので、他人が無断で模倣したり利用できないようになっています。
尚、“知的財産”とされるのは“形のあるもの”ではなく、デザインやアイデア・情報など“形のないもの”を指します。
「著作権」と「商標権」はどちらも「知的財産権」に含まれているのですが、保護される権利の対象が違います。
著作権
著作物が創作された時点で、著作者(著作物を作った人)に自然に発生する権利。
登録などの手続きは必要がなく、その権利は著作者の死後70年間保護されます。
「著作権法」の目的については、経済産業省が公開している「知的財産権制度入門」に、下記のように記されています。
著作権法は、創作された著作物に関して、その公正な利用に留意しつつ、著作者の権利の保護を図り、「文化の発展」に寄与することを目的としています。
引用元:経済産業省 特許庁 | 2019年度説明会テキスト「知的財産権制度入門」
尚、「著作権」によって保護されるものの例として、小説、音楽、美術、映画、コンピュータ・プログラム等の著作物が挙げられています。
※「著作権」については、記事【知っていますか?ロゴの「著作権」について】でも詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
「著作権」を表すマーク
俗に“マルシー”と呼ばれている「©(シーマーク)」を目にした事がある方は多いかと思いますが、これが何を表しているかご存知でしょうか?
これは「著作権表示」と言って、「©」と共に著作権者を表示し、“著作権を明らかにする為に使われるマーク”です。
“C”は、「著作権」を意味する「Copyright(コピーライト)」の頭文字が由来となっています。
商標権
特許庁に出願し、審査を経て登録された場合に得られる権利。
その権利の存続期間は登録から10年で終了しますが、登録を更新する事でさらに10年間、権利を維持できます。しかも更新は何度でも可能なので、「商標権」は“更新し続ける事で半永久的に権利を存続”できます。
「商標登録」を表すマーク
先述した「©」と同じように、「商標登録」を表すマークもあります。
それが、俗に“マルアール”と呼ばれている「®(アールマーク)」です。時々、小さな「®」がロゴに添えられているのを目にする事があるかと思いますが、その「®」です。
こちらは「Registered Trademark(レジステッド トレードマーク)」と言って、“商標登録済みである事を表すマーク”です。
ところで、ロゴによっては「®」ではなく、「™」が添えられているのに気づいた方はいるでしょうか?
「™」は“ティーエムマーク”と呼ばれていて、“商標である事を表すマーク”です。
「™」の場合は“商標登録済み”かどうかに関わらず自由に使用できるので、単に商標である事を示す以外に、将来的に「商標登録」する予定である事をアピールする為に使われる場合もあります。
尚、「™」は「Trademark(トレードマーク)」が由来となっています。
そもそも「商標」って何?
「商標」という言葉はよく使われますが、そもそも何を指しているのか、少し分かりにくいですよね。
「知的財産権制度入門」では、「商標」について下記のように記されています。
商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。
(中略)
商標制度は、このような、事業者が商品やサービスに付ける商標を保護することにより、 商標を使用する者の業務上の信用の維持を図ることを通じて、産業の発達に寄与するととも に需要者の利益を保護することを目的としています。
引用元:経済産業省 特許庁 | 2019年度説明会テキスト「知的財産権制度入門」
「商標」を指すものとして、一番分かりやすいのが「ロゴマーク」です。
ですがロゴだけでなく、「色彩(色の組み合わせ)」や「音(サウンドロゴ)」、「動き(モーションロゴ)」なども「商標」として保護できるようになっています。
ただし、「商標」は出願しても登録が認められない場合があるので、“自然に”権利が発生する「著作権」と違って、必ずしも権利(商標権)が得られるものではありません。
尚、「サウンドロゴ」については記事【音もロゴになる!?新たなブランディングツール「サウンドロゴ」とは?】、「モーションロゴ」については記事【ロゴがアニメーションする!最近流行りの「モーションロゴ」とは?】にて詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
区別がつきにくい!?「商標権」・「特許権」・「意匠権」
「商標権」と区別がつきにくい「特許権」や「意匠権」についても、少し触れておきましょう。
それぞれが保護する権利は、下記のようになります。
- 商標権…“商品名、ブランド、屋号”などを保護
- 特許権…物、製造方法などの“発明”を保護
- 意匠権…商品の“デザイン”(形状、模様など)を保護
上記の権利を「ボールペン」に当てはめてみると、それぞれの権利が保護する部分は下記のようになります。
- 商標権…ボールペンのロゴの部分
- 特許権…ボールペンに使われている新しい発明
- 意匠権…ボールペンの“デザイン”
「商標」がある事で、消費者は数ある商品の中から目的のものを購入する際の“目印”にする事ができます。
また、商品やサービスを提供している企業の信頼度が高ければ、その企業の「商標」がある事で消費者は安心して商品を購入したり、サービスを利用する事ができます。
ロゴは「商標登録」するべき?
「商標権」は登録されなければ得られない権利ですが、ロゴは「商標登録」した方が良いのでしょうか?
『ロゴは「商標登録」しておいた方が良い』と、何となく感じている人は多いかと思います。ですが、自社のロゴに「商標登録」の必要があるかどうかは、判断がつきにくいですよね。
実は、「商標登録」はメリットばかりではありません。デメリットもあります。
次回は、「商標登録」のメリット・デメリットについて詳しく解説していきますので、『自社のロゴは「商標登録」すべきかどうか』の参考にしてみてください。