オリンピックの“顔”、歴代エンブレムのデザインをまとめてお見せします!-後編-

ロゴ作成 2021.09.14

前回の記事では、1924年パリ大会から1980年モスクワ大会までの「オリンピック・エンブレム」のデザインをご紹介しました。

近年に近づくにつれ、現在使われている様な“ロゴらしい”デザインなっていくのが興味深いですね。

 

今回は引き続き、1984年の大会から最新の2024年開催予定の「オリンピック・エンブレム」をご紹介します。

スポーツ大会やスポーツイベント、運動会などのロゴデザインのアイデアになる部分もありますので、ぜひロゴ作成の参考にしてみてください。

 

 

 

歴代の夏季オリンピックのエンブレム-後編-

1984年—ロサンゼルス(アメリカ合衆国)

1984年ロサンゼルス大会エンブレム

赤・青・白のカラーや「星」のモチーフは、アメリカの国旗「星条旗」を思わせるデザインですね。

 

こちらのエンブレムも、前回の記事でご紹介したモスクワ大会同様、水平線がスピード感を感じさせるデザインです。特に、右から左へ向かうにつれて線幅が細くなっていく様は、モスクワ大会の均一の線より、移動している雰囲気と線に勢いを感じます。

 

実はこの水平線、スピード感を表しているだけではありません。

数えてみると、線の数は“13本”。これはアメリカ独立時の13州※を表しているのだそうです。

※アメリカ独立時の13州…コネティカット、サウスカロライナ、ジョージア、デラウェア、ニュージャージー、ニューハンプシャー、ニューヨーク、ノースカロライナ、バージニア、ペンシルベニア、マサチューセッツ、メリーランド、ロードアイランド

 

アメリカを表す要素は、こんなところにも隠されていたのですね。

 

 

 

1988年—ソウル(韓国)

1988年ソウル大会エンブレム

韓国の伝統的な模様「三太極」(勾玉が3つ組み合わさったような模様)をイメージさせます。

 

中心に渦巻いているような部分は“世界から韓国に集まる人々”を表現し、外側へ向かって続いていくような部分は“人間の永続的な幸福と繁栄を求めて前進すること”を意味しているとの事。

 

こちらも一つのモチーフの中に、複数の意味が込められています。

 

 

 

1992年—バルセロナ(スペイン)

1992年バルセロナ大会エンブレム

手描きのような線と点で極限までデフォルメされた「アスリート」が印象的なエンブレムは、バルセロナ出身のジョセップ・マリア・トリアス氏の作品です。

 

躍動的なポーズを取っているこの「アスリート」、実は「五輪マーク」を「ハードル(障害物)」に見立てて飛び越えている様子を表現していたのです。

 

「五輪マーク」とモチーフをただ単に組み合わせるのではなく、“五輪マークもモチーフの一部”としてエンブレムをデザインしているのが面白いですね。

 

青・黄・赤の鮮やかなカラーは、地中海や降り注ぐ太陽を感じさせます。

 

 

 

1996年—アトランタ(アメリカ合衆国)

1996年アトランタ大会エンブレム

こちらのエンブレムも、「五輪マーク」がモチーフの一部(トーチ部分)としてデザインされていますね。ですが、モチーフに使われているのは「五輪マーク」だけではありません。

 

この時のオリンピックは、1896年から始まった「近代オリンピック」※の開催100周年記念大会。それにちなんで「100」の数字もモチーフの一部としてデザインされています。

※フランスの教育学者クーベルタン男爵の「スポーツによる青少年教育の振興と世界平和実現のために古代オリンピックを復興しよう」という呼びかけに応じて開催されるようになった、オリンピズムに基づき行われる祭典の事。

 

背景に使われているグリーンは、「樹木の都市」であるアトランタと、古代の勝者が身につけた「月桂樹」を表しているそうです。

 

 

 

2000年—シドニー(オーストラリア)

2000年シドニー大会エンブレム

こちらのエンブレムもバルセロナ大会同様、手描きの線でデフォルメされた「アスリート」が描かれています。ですが、バルセロナ大会のエンブレムと違って、「アスリート」を構成しているパーツにもう少し細かく意味を持たせています。

 

頭と腕の部分(黄)は「太陽」と「岩」のモチーフになっていてオーストラリアの風景を、足の部分(赤)は先住民アボリジニが狩猟や儀式で使用していた「ブーメラン」のモチーフになっています。

さらに、「アスリート」の上部に描かれた“ギザギザ(青)”。こちらはトーチからたなびく「煙」と、シドニーの象徴的建造物「シドニー・オペラハウス」※の特徴的な屋根の部分を表しています。

※建築家ヨーン・ウツソンによってデザインされた、20世紀を代表する近代建築物。2007年に世界遺産に登録。

 

“聖火トーチを持って走るアスリート”に見えるイラストが、開催都市や開催国を象徴するモチーフで構成されているのは面白いですね。

 

 

 

2004年—アテネ(ギリシャ)

2004年アテネ大会エンブレム

手描きのラフなタッチで描かれているのは、「オリーブの冠」です。

 

これまでのエンブレムデザインには、“勝者”を表す為に「月桂樹」のモチーフが度々使われていましたが、アテネ大会のエンブレムでは、古代オリンピック(オリンピアまたはオリュンピア祭)で授与されていたオリーブにちなんで「オリーブ冠」がモチーフとなっています。

葉っぱだけでなく「オリーブの実」も描かれているので、「月桂冠」とは違う事が分かりますね。

 

「エンブレム」に使われている鮮やかな青と白は、ギリシャ地方を象徴する色。

エーゲ海の青い色と、白壁の家々の美しいコントラストを連想させますね。

 

 

 

2008年—北京(中華人民共和国)

2008年北京大会エンブレム

バルセロナ大会やシドニー大会とは違った方法…開催地「北京」の「京」を使って「アスリート」を表現したエンブレムです。

 

このエンブレムは「中国の印章 舞い踊る北京」(中国印)と名付けられていて、中国の伝統的な印章と書道の要素をデザインに取り入れる事で“中国らしさ”を表現しています。

また、赤のカラーにも中国っぽさを感じます。

 

エンブレムにあえて「漢字」を使う事で他国のエンブレムデザインとの差別化が出来、このように歴代のデザインと並べてみても印象に残りやすいですね。

 

日本発、海外向けのロゴを作る際、海外の人々にとっての読みやすさ・覚えやすさを考慮するならば、アルファベットを使ったデザインにするのが一般的です。

ですが、より“日本らしさ”を出したい場合には、あえて漢字をメインに使ってロゴをデザインしてみるのも、海外の人々から見てインパクトがあって良いかもしれませんね。

 

 

 

2012年—ロンドン(イギリス)

2012年ロンドン大会エンブレム1

ロンドン大会のエンブレムについては、記事【成功ばかりじゃない!ロゴの「失敗実例」】でもご紹介しましたね。

“失敗作”としてご紹介しましたが、それには「斬新すぎて人々に受け入れられなかった」という理由があります。

 

これまでのエンブレムは、開催国や開催都市、オリンピックに関するものをモチーフとしてデザインされたものがほとんどでした。

ですが、ロンドン大会のエンブレムはオリンピック史上初の“開催年”がモチーフ。

 

一般の人々がこのデザインを“良い!”と感じるには、時代がまだ早かったようです。

2012年ロンドン大会エンブレム2

 

 

2016年—リオデジャネイロ(ブラジル)

2016年リオデジャネイロ大会エンブレム

3人の人物が手を取り合い、楽しく踊っているように見えるエンブレムです。

リオデジャネイロと言えば、「リオのカーニバル」で有名な都市。エンブレムのデザインや色から、その陽気で楽しげな雰囲気が感じられますね。

 

ところでこのエンブレム、これまでのフラットなデザインとは違って、立体的な影が付けられてとてもリアルな描写になっていますよね。

実はこのエンブレム、オリンピック史上初の“3Dデザイン”なのです。

 

初めから立体を意識して作られていると言う事は、立体化(グッズ化)しやすいメリットがあります。

実際に、メダリストへの副賞として、立体化されたエンブレムの記念品(メダルスタンド)が授与されていました。

 

 

 

2020年—東京(日本)

2020年東京大会エンブレム

「市松模様(いちまつもよう)」と藍色に、日本や江戸(=東京)らしさを感じるデザインのエンブレムです。

 

ところで、「市松模様」の四角形が異なっている事に意味があったのはご存知でしょうか?

 

四角形には3種類の形があり、この形の違いによって“国や文化・思想などの違い”を表現しているとの事。

また、形が異なる「3種類の四角形」から、まとまりのある1つのデザインを作っている事から、「多様性と調和」のメッセージを表現しているそうです。

 

「東京2020オリンピック」のエンブレムについては、記事【「東京2020エンブレム」に学ぶロゴデザインのポイント】で詳しくご紹介しましたので、ぜひそちらもご覧くださいね。

 

 

 

2024年—パリ(フランス)

2024年パリ大会エンブレム

パリ大会のエンブレムを見た時、どの様な印象を持ったでしょうか?

 

こちらのエンブレムは、「金メダル」、「炎」、そして、「女性=マリアンヌ」のモチーフが一体となってデザインされています。

 

『マリアンヌって誰…?』と思った方、とある有名な絵画なら知っているのではないでしょうか?

その絵画とは、ウジェーヌ・ドラクロワが「フランス7月革命」を題材に描いた「民衆を導く自由の女神」です。

 

絵画の中央には、上半身がはだけた状態で黄色(クリーム色)のワンピースを纏った一人の女性が右手にフランス国旗を掲げ、左手には銃を持ち、勇ましく人々を導いている姿が描かれています。その女性がフランスの自由の女神、「マリアンヌ」です。

 

「マリアンヌ」とはフランスを象徴する女性像で、擬人化されたフランスのイメージの事です。

「マリアンヌ」は切手のデザインに使われていたり公的施設に彫像が設置されるなど、フランスの人々にとっては非常に馴染みのある女性なのです。

 

エンブレムのデザインに、女性の要素を取り入れた理由は他にもあります。

 

1896年アテネで行われたオリンピックの第1回大会では男性のみ参加が許されていましたが、1900年パリで行われた第2回大会からは女性の参加も認められるようになりました。当時、女性が世界的なスポーツ大会への参加できる様になったのは、非常に画期的な事だったと思われます。

パリという場所は、女性とスポーツの歴史を語る上で特別な地であり、女性がデザインされたのエンブレムはそんなオリンピックの歴史を物語っているのです。

 

ちなみに、パリ大会のオリンピック・パラリンピックのエンブレムは、「五輪マーク」「パラマーク」の部分以外同じデザインを採用しています。通常、オリンピック・パラリンピックではデザインを変えるので、これは史上初の事です。

同じデザインにした事には、“2つの大会に違いは無い(違いを作る必要は無い)”などの思いが込められているのだそうです。

 

2024年パリ大会イメージビジュアル

画像引用元:2024年パリオリンピック公式Twitter Paris 2024

 

近年に近づくほど、エンブレムは単にオリンピックの開催都市や開催国と年号を表すためのデザインでは無く、その大会に込められたビジョンや独自性などを表現する為のものへと変化してきました。

ロゴが“会社の顔”と言われるのと同じ様に、エンブレムも“オリンピックの“顔”として重要な意味を持つ様になったのです。

 

※各大会のエンブレム画像とデザインコンセプトは、「IOCWebサイト」の各大会紹介ページより引用しております。

 

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