成功ばかりじゃない!ロゴの「失敗実例」
コラム 2020.02.04
有名企業では、「会社の顔」となるロゴで失敗することなんて無いように思いますよね?
でも、実は有名企業でも「失敗」はあったのです。
今回は、企業ロゴやその他のロゴの失敗例や、ロゴを作成する際に避けた方が良いデザインなどをご紹介します。
ロゴの失敗実例
GAP( GAP.INK)
画像引用元:CNNMoney
アメリカの大手アパレルブランドの「GAP」は、2010年にロゴデザインをリニューアルしました。
しかし、新しいロゴはGAPファンからかなり不評だったようで、数日のうちに「元のロゴデザインに戻る」という事態に…。
旧ロゴはスリムな「明朝体」のフォントで、すっきりと綺麗め。
四角い紺の背景も、シンプルで上品な雰囲気です。
新ロゴは「ゴシック体」に変わったことで、旧ロゴに比べてかなりカジュアルな雰囲気になりました。
さらに、旧ロゴの紺色の背景から「背景無し」のデザインになり、ロゴ全体が白っぽくなったことも、ロゴをカジュアルな雰囲気にさせているように感じます。
旧ロゴと真逆の雰囲気になった新ロゴですが、「GAP」のカジュアルなブランドイメージとは決して「合わない」ことは無いように思います。
では、なぜ批判が殺到してしまったのでしょうか?
「GAP」はブランドとしてはカジュアル路線ではありますが、旧ロゴが上品で綺麗めなデザインだったので、「カジュアルだけど安っぽいブランドではない」という雰囲気がありますね。
ところが、新ロゴがカジュアルなデザインになってしまったので、GAPファンにとっては「安っぽいブランドに見える」と捉えられてしまったのでしょう。好きなブランドが、ロゴデザインの変更によって「安っぽい雰囲気」になってしまっては、ファンとしてはがっかりしますよね。
この「ロゴリニューアル騒動」から、消費者(ファン)にとっていかにブランドのロゴデザインは重要かということがわかります。
Tropicana(Tropicana Products社)
画像引用元:CNNMoney
アメリカのTropicana Products社が生産する、オレンジジュースで有名な「トロピカーナ(Tropicana)」。
こちらのロゴも、2009年のパッケージリニューアルの際に失敗しています。
新ロゴは、パッケージのデザインと合うように「スッキリ、シンプル」になっていますね。
最近だと、食品でもこのようなシンプルなデザインのパッケージが増えてきたので、そんなに不評になるようなデザインには見えない気もしますが…
旧ロゴは商品を購入する際に目につきやすく、パッケージデザインはベタな表現ではありますが「果汁100%」をストレートに表現していて、誰にでも分かりやすく安心感を与えるデザインです。
対して新ロゴは、ロゴの配置(向き)が変わっているためにブランド名を認識しにくくなり、オレンジジュースの表現がスッキリしすぎて「果汁100%ではない」ような印象を受けてしまいます。
こちらの場合も批判を受けて、元のデザインに戻すことになってしまいました。
「トロピカーナ」の場合は「ロゴだけで失敗した」という訳ではありませんが、パッケージも含めた全体のデザインをスタイリッシュにしようとしたのが、消費者に受け入れられなかったようです。
消費者はスタイリッシュでお洒落なパッケージよりも、「いつも購入している商品」という信頼感・安心感を求めていたということですね。
食品に関しては、例え中身が変わらなくても、ロゴを含めたパッケージデザインが消費者に与える「味や品質のイメージ」に大きく影響します。
商品の歴史が長ければ愛用している消費者も多いので、ロゴデザインを変更する際は、消費者に与えるイメージを入念にリサーチする必要があるでしょう。
ロンドンオリンピック エンブレム(Wolff Olins)
引用元:ロンドンオリンピック公式サイト
2012年に開催された「ロンドンオリンピック」のエンブレムは少し変わったデザインだったため、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか?
過去のオリンピックエンブレムの多くは、開催都市や国のイメージをモチーフにデザインされていました。
対して「ロンドンオリンピック」のエンブレムは、開催年の「2012」がモチーフのかなり斬新なデザインとなっています。
これまでとは違う路線を試みたエンブレム。
発表後の世間の反応は…「読みにくい」「ごちゃごちゃしている」と多数の批判の声が上がり、思うように支持は得られませんでした。
「図形のような数字」のエンブレムは一応「2012」と読めますが、確かに読みにくいですね。
形そのものはそんなに複雑ではないのですが、数字と数字(2012)の間隔が狭いせいか、ごちゃごちゃして見えます。
せっかくのビッグイベントなので、斬新なデザインにして世界の注目を集めるのも良いかもしれません。ですが、都市・国をPRできるチャンスでもあるのに、開催都市や国をイメージしたモチーフも無いこのエンブレムのデザインでは、少しもったいない感じもしますね。
ロゴをデザインしたのは「Wolff Olins」というブランドコンサルタント会社で、制作費は40万ポンド。高額な制作費に対してエンブレムデザインが「イマイチ」ということもあって、さらに批判が殺到したそうです。
また、「2012」が「ZION(エルサレムの歴史的地名)」にも見えるとのことで、イラン政府から抗議を受けるといった騒動にもなりました。
オリンピックエンブレムは世界中の人が目にします。
国が違えば、シルエットから連想するイメージも変わってくるので、思わぬところで批判を受けてしまうリスクがあるのです。
このように「イベントの顔」であるロゴが不評を買ってしまうと、イベントそのもののイメージダウンにも繋がってしまいます。
特にオリンピックは注目度が高いため、一度悪い印象が付いてしまうと、後々までそのことが語り継がれてしまいます。
作成する側がどんなにメッセージやコンセプトをロゴデザインに込めたとしても、万人に受けるデザインにするのは非常に難しいことなのです。
「失敗」しないために、避けた方が良いロゴデザインはこれ!
上記では「ロゴを発表してみたら批判が殺到した」という事例をご紹介しましたが、これは実際に発表してからでないと分からない部分も多くあるので、完全に避けるのはとても難しい問題です。
しかし、デザイン的に「これは避けた方が良い」というものはあるので、これからロゴを作ろう・リニューアルしようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
線が細い・文字が小さすぎるロゴ
ロゴは、名刺やピンバッジから看板など、様々な大きさで使用します。
そこで気をつけなくてはいけないのが「縮小しても、しっかり認識できるデザイン」です。
「繊細なイメージを表現したいから」といって細すぎる線を使ったり、「シンボルマークを目立たせたいから」とロゴタイプを極端に小さくしてしまうと、ロゴを縮小した際、「文字や線が潰れて(または、印刷がかすれて)見えにくくなった」ということになる可能性があります。
ロゴ作成を依頼する際は名刺サイズに縮小したイメージ(モックアップ)も作ってもらって、サイズが変わっても認識できるデザイン(線や文字の大きさ)かどうかを確認しておきましょう。
色をたくさん使いすぎているロゴ
ロゴは、目に付きやすいように、出来るだけ目立つデザインにしたいですよね。
ですが、目立たせるために色を多く使うのはオススメしません。
色をたくさん使うと確かに目立つかもしれませんが、「まとまりが無い」といった印象を与えてることもあります。また、「色がたくさんある」という方に意識が行ってしまい、ロゴそのものの印象が残りにくくなります。
ロゴデザインに使う色は、メッセージやコンセプトに合うものを多くても3〜4色だけ使う方が、まとまりがあってターゲットにイメージやコンセプトが伝わりやすいでしょう。
(ただし、「虹」や「七色」のイメージで色が多くなるのは例外です)
ロゴに使う色は、そのまま「コーポレートカラー(ブランドカラー)」に使われることが多くあります。
「コーポレートカラー」はWEBサイトや社用封筒・店舗内装などをデザインする際にを使うと、「オフィシャル感」や「統一感」を出すことができ、ロゴと並んで重要な役割を果たします。
ですが、ロゴに使われている色が多いと「コーポレートカラー」と結びつきにくかったり、「コーポレートカラー」を使っているのに統一感を感じられなかったり…ということにもなります。
そういった点からも、使う色は少なめにしておく方が良いでしょう。
情報を詰め込みすぎ・装飾しすぎているロゴ
ロゴは会社やブランドなどの「顔」となるので、ロゴを見ただけでどんな会社・ブランドなのか分かるデザインにしたいですよね。
ですが、ロゴデザインに情報を詰め込みすぎてしまうとごちゃごちゃした見た目になって、ロゴの印象が残りにくくなってしまいます。
また、「こだわったデザインにしよう!」と装飾を加えすぎた場合も、ごちゃごちゃした見た目になって印象に残りにくくなってしまいます。
どちらの場合も、ロゴを縮小して使う場合にデザインが潰れてしまい、その結果、ロゴとしての役割を果たさなくなってしまいます。
ロゴデザインに落とし込みたいメッセージやコンセプトは数を絞り、ターゲットに伝わりやすいようシンプルなデザインにした方が、断然印象に残りやすくなります。
ただし、シンプルなデザインにすると「他のロゴと似てしまった」とか、「ロンドンオリンピックエンブレム」のように「別のモチーフ」に見えてしまうことも。
「他のロゴと似てしまった」場合は、ロゴを見る側に混乱を与えますし、ロゴが似た側から訴えられる可能性もあったりするので、デザインを進める上で必ずチェックが必要です。
「別のモチーフ」に見えてしまう場合は、それが宗教的・性的・戦争に関わるものとなるとセンシティブな問題になるので、それらに似た(連想する)デザインになっていないかどうか確認が必要です。