ロゴは「商標登録」した方が良い?登録によるメリット・デメリット
コラム 2022.01.18
前回の記事では「商標権」について、「著作権」と比較しながら詳しく解説しました。
「商標権」を得るには<出願→審査→登録>の手続きが必要な為、『作ったロゴは商標登録した方が良いのかな?しなくても大丈夫かな?』と迷っている方もいるかと思います。
そこで今回は、ロゴを「商標登録」するメリット・デメリットについて解説していこうと思います。
ぜひ、「商標登録」を検討する際の参考にしてみてください。
■目次
ロゴを「商標登録」するメリット
ロゴの「商標登録」を悩んでいる人の中には、「商標登録」によってどのようなメリットがあるのかをよく知らない為に、「手間をかけてまで出願すべきかどうか…」と、悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
ロゴを「商標登録」するメリットには、下記のようなものがあります。
ロゴを独占的に使用できる
「商標登録」された商標は、「商標権」を得た人=「商標権者」が“独占的に使用”する事ができます。
つまり、「商標権者」の許可なく、他人が商標を使用する事ができなくなるのです。
その為、他人が勝手に商標を使用していた場合、「商標権者」は使用の差し止めや、損害賠償を請求する事ができます。
ちなみに、勝手に商標を使用していた側が“商標登録されている事を知らなかった”としても、使用の差し止めや損害賠償は請求できます。
「商標登録」をしておけば、ロゴデザインの類似トラブルが起こった場合でも優位に立てるのです。
同一または類似のロゴの登録を防ぐ
「商標登録」された「商標」は、後から同一または類似の「商標」の登録ができなくなります。
つまり、「商標登録」は“早い者勝ち”なのです。
例えば、ずっと前から使用している自社ロゴだったとしても、他社が類似デザインのロゴを「商標登録」してしまった場合、自社ロゴが使えなくなる可能性もあるのです。
ですが、ロゴを作ったすぐ後に「商標登録」を済ませておけば、後から同一または類似ロゴが作られても登録される事は無いので、自社ロゴが使用できなくなる心配はありません。
ただし、同一または類似の「商標」の登録ができなくなるのは、“商品・サービスの区分が同じまたは類似”の場合に限ります。
例えば、自社ロゴを「化粧品」の区分で「商標登録」したとします。その後に類似ロゴが「事務用品」の区分で出願されると、“区分が違う”ので、そのまま登録されてしまいます。
『他の区分だったとしても、類似ロゴが登録されるのは嫌だな…』と思われるかもしれませんが、「商標権」は「ロゴマーク+商品・サービスの区分」のセットで登録される為、このような事が起こるのです。
「商標権」は、あくまで“競合他社と区別する為の権利”であって、“ロゴのデザインを独占する権利”ではないという事ですね。
半永久的にロゴを保護できる
前回の記事でも述べましたが、「商標権」は10年の存続期間が満了しても更新する事ができ、また、何度でも更新が可能となっています。
つまり「商標権」は、半永久的に持つ事が可能なのです。
ちなみに、その他の「知的財産権」はどのようになっているのかと言うと…「著作権」は著作者の死後70年、「特許権」は出願の日から20年で、それぞれの存続期間が満了します。しかも更新はできない為、存続期間が満了した後はそれぞれの権利が消滅する事になります。
ブランドを育てられる
「商標権」は更新によって半永久的に持つ事ができますが、『わざわざ更新してまで、権利を持ち続ける必要あるのかな?』と思った方もいるかもしれませんね。
「商標権」が“更新できる”という事は、“ブランドを育てられる”というメリットになります。
“ブランド力”や“ブランドの価値”といったものは、すぐに確立したり、高められるものではありません。長い時間をかけ、ゆっくり積み重ねられていくものです。
「商標登録」は、単に“ロゴを守る”だけでなく、“ブランドを育てる”事にも有用なのです。
ロゴを「商標登録」するデメリット
良い事ばかりのように見える「商標登録」ですが、実はデメリットもあります。
それでは次に、デメリットについて見ていきましょう。
「商標登録」の為の費用がかかる
「商標登録」にかかる費用は、主に下記のようなものがあります。
- 出願の際に発生する費用<3,400円+(8,600×区分数)>
- 登録料を納付する際に発生する費用<28,200円×区分数(※10年分一括納付の場合)>
ただ、出願には出願書類の作成や商標の調査など初心者には難しい作業が多い為、ほとんどの場合は“知的財産に関する専門家”である「弁理士」に依頼する事になります。
そうなると、上記の費用にプラスで「弁理士」への出願手数料が発生します。
また、「商標登録」を更新する際にも費用が発生します。
- 10年一括納付…38,800円×区分数
- 5年分割納付…22,600円×区分数
そして、更新の際にも「弁理士」に依頼する事がほとんどなので、上記の費用にプラスして「弁理士」への更新手数料が発生します。
「商標登録」の費用は「区分数」を何個にするかで大きく変わりますが、それなりに費用がかかる事は確かです。
ロゴを積極的に使用する必要がある
無事に商標が登録できれば、ロゴが保護されるのでひと安心…してしまうかもしれませんが、ここで注意が必要です。
実は、「商標登録」された後は、“商標を使用する義務”が発生するのです。
例えば、ロゴを「商標登録」した後に、特に使用する事なく放置していたとします。
ロゴを使用していなかった期間が継続して3年以上だった場合、他社から商標の取り消しを求められ(不使用取消審判)、特許庁から「商標権」を取り消されてしまうのです。
そうなった場合、他社は類似ロゴの「商標登録」が可能となり、ダブルでダメージを受けてしまいます。
せっかく「商標権」を得たロゴを“使用しない”という事は無いとは思いますが、複数のロゴを「商標登録」した場合などは、うっかり放置してしまうロゴが出てくる可能性があります。
「商標登録」後は、更新手続きだけでなく、ロゴの使用についても管理しなければいけない手間が発生するのです。
ロゴを「商標登録」しなくても良いケースってあるの?
「商標登録」によって「商標権」を持ち続けるにはデメリットもありますが、それ以上にメリットの方が大きい為、多くの企業は「登録商標」する事を選択します。
しかし中には、『うちは大手企業という訳でもないし…本当に必要かな?』と思っている方もいるでしょう。
ロゴを「商標登録」しなくても良いケースを強いて挙げるなら、“その商標を使えなくなっても、自社にダメージが無い”ケースです。
「商標登録」していなかった場合、他社が類似ロゴを登録して、こちら側にロゴの使用差し止めを請求する可能性が発生します。
そうなると、ロゴデザインや名称の変更、新しいロゴへの差し替え(印刷のやり直し)など、多くの手間と費用がかかります。
『もう、そのロゴを使うのを止めようと思っていた』や、『ロゴを使っていた部分が少ないから、差し替えも手間ではない』といった事であれば、「商標登録」していなかった場合のダメージは少ないでしょう。
しかしそうでない場合は、ロゴを「商標登録」しておく事をおすすめします。