「家紋」ってどんなデザインがあるの?多種多様な図案をご紹介!
コラム 2021.11.09
日本人にとって身近なロゴマークである「家紋」について、前々回【歴史編】と前回【デザイン編】の2回に渡って詳しくご紹介しました。
「家紋」には、色々な歴史的な背景があったり、デザイン的に優れている点など、意外と知らなかった事も多かったのではないでしょうか?
「家紋」の図案は非常に種類が多い為、ロゴ作成のアイデアや参考として大いに活用できます。
そこで今回は、様々な種類がある図案の中から独特のデザインのものや、「家紋」の中でも特に多く使われているものをご紹介しますので、ぜひロゴデザインの参考にお役立てください。
■目次
「家紋」の種類
「家紋」は、どれくらいの種類があるのかご存知でしょうか?
「家紋」の中には、あまり知られていない図案もある為、実は正確な数が分かっていません。ただ、少なくとも2万種類以上の図案があるとのこと。ものすごい種類の多さですよね。
あまりにも数が多いので全てをご紹介する事はできませんが、どのような図案があるのか大まかにご紹介します。
図案の大まかな種類
「家紋」は“描かれているモチーフ”を元に、大体7つに分類する事ができます。
自然紋
※画像引用元:家紋のいろは | 日本の家紋に関する情報サイト
「雲」や「雪」、「月」や「山」などの、自然現象や自然のもの・風景を図案化したもの。
文様紋
※画像引用元:家紋のいろは | 日本の家紋に関する情報サイト
「亀甲(きっこう)」や「七宝(しっぽう)」などの連続文様(パターン)で使われているものや、伝統的に使われている文様を図案化したもの。
植物紋
※画像引用元:家紋のいろは | 日本の家紋に関する情報サイト
徳川家の「家紋」で有名な「葵」や「藤」などの植物を図案化したもの。
動物紋
※画像引用元:家紋のいろは | 日本の家紋に関する情報サイト
「鶴」や「蝶」など、生き物を図案化したもの。「鷹の羽」や「鹿角」といった、“動物の一部分”が図案化されているものもあります。
器物紋
※画像引用元:家紋のいろは | 日本の家紋に関する情報サイト
「鎌」などの生活道具をはじめ、楽器・玩具・貨幣などの身近な人工物を図案化したもの。
文字紋
※画像引用元:家紋のいろは | 日本の家紋に関する情報サイト
「文字」をそのまま図案化したもの。
建築紋
※画像引用元:家紋のいろは | 日本の家紋に関する情報サイト
「鳥居」や「井桁(いげた)」※など、建物や建造物を図案化したもの。
※木で“井の字型”に組まれた井戸の縁の部分のこと。
「家紋」は、現在のロゴデザインでよく見られる抽象的なデザインより、生活の身近にあるものをモチーフにデザインされているものが多く見られ、特に「植物紋」と「器物紋」は多くの種類が存在します。
十大家紋
「家紋」の中には、特に多く使われている10種類の紋があります。それが、「十大家紋(じゅうだいかもん)」です。
“多く使われている”と言われているだけあって、どの「家紋」もどこかで目にした事があるのではないでしょうか。
1.沢瀉(おもだか)紋
※画像引用元:ウィキペディア(Wikipedia) | 沢瀉紋
水生植物のオモダカは、葉の先端の形が矢の先に似ている事から別名“勝軍草(かちいくさぐさ)”と呼ばれ、武家に人気があった紋です。
2.柏(かしわ)紋
※画像引用元:ウィキペディア(Wikipedia) | 柏紋
柏の葉は古代より神へ供物を供える際の器として用いられていた為、柏は“神聖な木”として見られていました。
また、柏は枯れ葉が枝に付いたまま越冬し、春に新芽と入れ替わりで落葉する事から『家系が途切れない』『子孫繁栄』の象徴として、公家や武家に人気があった紋です。
3.蔦(つた)紋
※画像引用元:ウィキペディア(Wikipedia) | 蔦紋
蔦とは、ブドウ科落葉性のつる植物の事です。
江戸時代、徳川家の一族である松平氏の「家紋」として使われ、八代将軍徳川吉宗も好んで使っていた事から、「葵紋(徳川)」に次いで権威ある紋として定着。
ただし、一般庶民が「蔦紋」を使用する事は禁止されていなかった為、広く庶民にも浸透していきました。
4.藤(ふじ)紋
※画像引用元:ウィキペディア(Wikipedia) | 藤紋
藤は寿命が長く繁殖力が強い為、“縁起の良い植物”とされてきました。
また、栄華を極めた藤原氏が用いていた紋だったので、藤原氏にあやかって使用する人が多かったそうです。
5.片喰(かたばみ)紋
※画像引用元:ウィキペディア(Wikipedia) | 片喰紋
多年草(2年以上、同じ株から花を咲かせる植物)のカタバミの葉を図案化した紋です。カタバミの葉は、シロツメクサ(クローバー)に似たハート形をしていますが、全く異なる植物です。
カタバミは繁殖力が強く、一度根を下ろすと根絶が難しい“雑草”なのですが、その性質から「家が絶えない」事の象徴として人気がありました。
6.橘(たちばな)紋
※画像引用元:ウィキペディア(Wikipedia) | 橘紋
タチバナとは、日本に古くから自生している野生のミカンの事です。
奈良時代、元明天皇に仕えていた女官・県犬養三千代(あがたのいぬかいのみちよ)が「橘」の姓を賜ったのが「橘氏」の始まりと言われていて、「橘紋」は「橘氏」の一族が多く使用している紋です。
また、「橘」の読みを「太刀花」に当てはめる事もあり、武家との関わりの深い紋でもあります。
7.茗荷(みょうが)紋
※画像引用元:ウィキペディア(Wikipedia) | 茗荷紋
ショウガ科の多年草で、花穂部分は食用とされるミョウガ。
ミョウガが、「冥加」(知らないうちに授かっている神仏の加護や恩恵の事)と音が同じ事から、縁起の良い紋として神社仏閣などで多く用いられています。
8.鷹の羽(たかのは)紋
※画像引用元:ウィキペディア(Wikipedia) | 鷹の羽紋
「鷹の羽紋」は、猛禽類の鷹の羽根を図案化したものです。
獲物を追う勇猛果敢な姿や、矢の羽根に用いられていた事から、鷹は武士に好まれた動物でした。その為、「鷹の羽紋」は武家の間で多く使用されていました。
また、鷹は上流階級にとっては「鷹狩り」で親しまれていたので、公家の間でも「鷹の羽紋」は人気の紋でした。
9.木瓜(もっこう)紋
※画像引用元:ウィキペディア(Wikipedia) | 木瓜紋
御簾(みす)の上部に付けられる織物「帽額(もこう)」でよく使われた文様だった事から、「木瓜(もっこう)」と呼ばれるようになったそうです。
この文様は、子孫繁栄を意味する「窠紋(かもん)」(鳥の巣がモチーフ)が由来とされていますが、その他に「木瓜(きゅうり)」の断面がモチーフとの説もあり、はっきりした事は分かっていません。
10.桐(きり)紋
※画像引用元:ウィキペディア(Wikipedia) | 桐紋
古代中国では“鳳凰が棲む”として、「アオギリ(青桐)」が神聖な木として扱われていました。
そして、その伝承が日本に伝わった事から紋のデザインになったのですが、実は「桐紋」に描かれているのは全く別の植物※の“キリ(白桐)”です。
※アオギリは「アオイ科」、キリは「キリ科」。
「桐紋」は、元々「菊花紋」と共に天皇家で使われていた紋なのですが、功績を挙げた武将に「桐紋」が与えられた事で、徐々に天皇家以外にも広がっていきました。
ちなみに、桐と言えば「桐タンス」が思い浮かぶかと思いますが、「桐タンス」は“キリ(白桐)”の方です。
「家紋」はどれも、図案化された様々な理由や由来があって、とても興味深いですね。
ちなみに、ここに掲載している紋は“たくさんある「◯◯紋」の中の一つ”で、実はそれぞれの紋で、他にも様々なシルエット(形)の紋が存在します。
(例えば「鷹の羽紋」の場合、ベーシックな「違い鷹の羽」以外に、「三つ並び鷹の羽」「折れ鷹の羽」「割り違い鷹の羽」…など、複数のバリエーションがあります。)
さらに、“単体”の紋だけでなく、他の紋と組み合わせたもの(例:茗荷+蔦)もあるので、実にバラエティ豊かです。
「家紋」は一つの紋でかなり多くのバリエーションがある為、“2万種類以上”という膨大な数になるのです。
普段の生活の中ではあまり関わる事の無い「家紋」ですが、この機会にぜひ、ご自身の「家紋」についても調べてみてはいかがでしょうか?
「家紋」をきっかけに、これまで知らなかった家の歴史(ルーツ)が分かるかもしれませんよ。