ロゴデザインの今と昔1 〜デザインが変わる理由〜
コラム 2021.03.09
最近のロゴデザインについて、「昔と比べてデザインの傾向が変わってきたなぁ…」と感じた事はありませんか?
また、大手企業などがロゴデザインをリニューアルして、以前とは違うデザインになっているのをよく見かけますよね。
今回は、ロゴデザインが“変わる理由”について、解説いたします。
■目次
ロゴデザインが“変わる理由“とは?
以前の記事【知っておいた方が良い?ロゴデザインのトレンドについて】でも解説していますが、ロゴのデザインにも、ファッションと同じように“トレンド”があります。
ロゴにトレンドのデザインを取り入れていると、“新しさ”や“カッコいい・おしゃれ”といったイメージを与える事が出来るので、新しくロゴを作ったり、ロゴデザインをリニューアルする際に、トレンドのデザインを取り入れているケースは多く見られます。
特に、大手企業やユーザーに若年層が多いSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の企業などは積極的にトレンドを取り入れて、時には以前のデザインを踏襲しない、全く違うロゴに変えてしまう事もあります。
ですが、ロゴのデザインが変わっているのは、“トレンド”だけが理由ではありません。
実は、ロゴが作られた“時代背景”も関わっていたのです。
“会社の顔”とも言われるロゴのデザインが、どのような時代背景によって変化してきたのか…年代別に振り返ってみましょう。
1970年代-「CI」の導入
「CI」という言葉を、ご存知でしょうか?
企業戦略のキーワードとして聞いた事がある方もいるかと思いますが、1970年代に作られた(または、リニューアルされた)ロゴは、「CI」が密接に関係していたです。
【CIとは?】
「CI」とは「Corporate Identity(コーポレート・アイデンティティ)」の略で、企業の特性や独自性を統一されたデザインやメッセージで企業内外に発信し、社会と共有する事で企業の価値を高めていく事を指す、企業戦略の一つです。
「CI」はさらに、次の3つの要素によって構成されています。
●VI
「VI」は「Visual Identity(ビジュアル・アイデンティティ)」の略で、「視覚の統一」を指します。
ロゴをはじめ、名刺や封筒、企業パンフレットなど、“目にするもの”全てがそれに当たります。
●MI
「MI」は「Mind identity(マインド・アイデンティティ)」の略で、「理念の統一」を指します。
“理念”とは、企業の目指すべき理念やあり方・経営哲学などの事で、“スローガン”としてロゴに添えられている場合もあります。
●BI
「BI」は「Behavior identity(ビヘイビア・アイデンティティ)」の略で、「行動の統一」を指します。
企業理念や経営哲学に基づき、それに相応しい行動をとる事によって“その企業らしさ”を確立出来るのです。
社員教育や組織改革など、“理想に向けた行動”もこれに含まれます。
「CI」と言うと“ロゴを作ること”と思われている方がいるかもしれませんが、“ロゴを作ること”は、あくまで「CI」という活動の中の一つなのです。
経済が発展し、技術力の発展も目覚ましかった1970年代。
それまでは「機能」や「品質」を基準に選ばれていた製品は、企業ごとの差異がほとんど無くなった事で、「イメージ」や「デザイン」を基準に選ばれる時代へと変わりつつありました。
そこで注目されたのが、アメリカ企業ではすでに導入されていた「CI」でした。
日本では、1975年に「マツダ株式会社」が初めて本格的に「CI」を導入。
「CI」という考え方が日本に入ってきた事がきっかけとなって、“ロゴデザインを変更しよう”という企業が出始めたのです。
1980年代-バブル経済で「CIブーム」
1980年代になると、バブル経済の影響もあって、さらに「CI」を導入する企業が増ました。
それが「CIブーム」です。
様々な企業が多額の広告費を投じてイメージアップ&高感度アップを図り、「CI」の活動の一つでもあるロゴに関しても、この時期に次々とリニューアル。
特に、カタカナやアルファベットのロゴへ変更する企業が多く見られました。
「CIブーム」では、「とりあえず、ロゴデザインを変えればイメージアップできる」といった考えの企業が多く、企業理念までを考えた本当の意味での「CI」に取り組んだ企業は多くありませんでした。
その為、バブルが崩壊すると、「CI(多くはロゴのリニューアル)にお金を掛けられない」となり、一気に「CIブーム(結果的にはロゴのリニューアルブーム)」が沈静化したのでした。
1990年代-デジタル環境でのロゴ制作
パソコンの登場は、ロゴデザインに劇的な変化をもたらしました。
それまでは“手描き”で制作していたロゴでしたが、1990年代のパソコンの普及に伴って、デジタル環境での制作へと移行していきました。
手描きでは表現できないデザインが次々と制作され、デザインの幅が広がったのです。
2000年代-「BI」という考え方の登場
2000年代には、「BI」という新しい戦略概念が登場しました。
「BI」は、「Brand Identity(ブランド・アイデンティティ)」の略で、ブランド論の第一人者デイヴィッド・アーカー氏は次のように提唱しています。
ブランドには、「ブランド・ビジョン」が必要である。そのブランドにこうなってほしいと強く願うイメージを、はっきりと言葉で説明したものだ
「CIブーム」でのロゴのリニューアルは、表面的な“見た目の良さ”が重視されたケースがほとんどでした。
しかし「BI」によって、ロゴは“顧客に持ってもらいたいイメージの象徴”としての役割を持つようになりました。
その為、単に見た目のおしゃれさや格好良さだけでなく、顧客に持ってもらいたいイメージに合う形や色などを落とし込んだデザインを重視するようになってきたのです。
以上のように、ロゴのデザインは“トレンド”と“時代背景”が関わりながら、少しずつ変化してきたのです。
次回は、有名企業の“ロゴデザインの変化の歴史”を、実例と共にご紹介します。